青山氏は、日本側が軍の関与を認めたことに対して、米国のABCをはじめとする各国のメディアが「日本政府は、日本軍が韓国の少女20万人をsex slaves(性奴隷)としたことを認め、10億円という大金を補償した」と報じたことにまず触れた。

http://news.livedoor.com/article/detail/11051299/
という記事について取り上げようと思います。

しかし記事は彼の発言を正確に書きお越しはしてはいないが、一般視聴者の多くがその記事どおりの理解するでしょう。



まあ慰安婦に関しても常々デタラメのオンパレードの青山氏であるが、今回のTV番組で

慰安婦のほとんどは日本女性と断定し、
「韓国は慰安婦20万人と主張している。それには挺身隊の女工も含まれるが、各国のメディアは韓国の主張そのままに報道している」 
とあたかも「韓国の少女20万人 」と主張しているかのような誘導言説で声を荒げた挙句、東国原氏と言い合いになっている。


言い合いの内容はどうでもいいので

青山氏の発言だけを検証します。

まず慰安婦のほとんどが日本人と断定する根拠は全くなく、というよりその「根拠らしい」ことすら説明していない。
あくまでも妄想に過ぎないということです。

日本の歴史家を含む多くの研究者は慰安婦となった日本人は多いが、中国・韓国・台湾人も多く、日本人は慰安婦の総数の50%を超えてはいないとする説が有力です。
それは公文書として記録された慰安婦の性病検査の報告書※1、渡航記録、慰安所での割合と兵士や慰安婦の証言から推測したものです。
中国大陸は「渡航証」(パスポート)が必要なかったのですが、南方(東南アジアの占領地)では渡航証が必要であり日本人は少なかったと思われます。

mandare_ian

ビルマ マンダレーの慰安所では日本人8、中国人11、朝鮮人17、ビルマ人19(ビルマ兵補向除く)となっています。日本人は将校専用のようです。

ATIS米軍調査報告書120号では日本人90人、朝鮮人703人の慰安婦が1942年8月20日に集団でラングーンに到着したとの証言が記載されています。
またATISのその他の捕虜尋問調書にはフィリピン、ラバウルの慰安所には中国人、朝鮮人、日本人の慰安婦がいた証言が記録されていて、日本人のいない慰安所もあったとの証言もあります。フィリピンでは現地人経営のフィリピン人慰安婦だけの準慰安所もあったようです。




それでは20万人の中には挺身隊が含まれているとする青山氏の発言ですが、

朝鮮人以外に中国人、台湾人、フィリピン人、インドネシア人が含まれるとするのが、海外メディアの説明です。
靑山氏は各メディアが報じた各国の慰安婦について言及を全くしていません。


12月28日に報じた各メディアの慰安婦の人数については


アメリカのABCは慰安婦の人数については説明していませんが

ガーディアン紙は

There is disagreement on the exact number of women forced into prostitution by Japan during its 1910-1945 colonial rule of the Korean peninsula. Campaigners say as many as 200,000 women – mostly Koreans, but also Chinese, south-east Asians and a small number of Japanese and Europeans – were forced or tricked into working in military brothels between 1932 and Japan’s defeat in 1945.

と多くが朝鮮人だが他にも中国人、東南アジア人、少ない日本人とヨーロッパ人(オランダ人やオーストラリア人と思われる)としています。

この記事を「なでしこアクション」は
「日本政府は、女性の性奴隷化に軍が関与していたことを認めた。日本統治下の朝鮮半島で強制的に売春をさせられた女性の数には論争があるが、活動家らは20万人と主張している。」
と歪曲しています。(なでしこのHPではリンクを貼らず)



ワシントンポストも
ガーディアン紙とほとんど同様

Independent historians have concluded that as many as 200,000 women and girls — from occupied countries including Korea, China, the Philippines and other Southeast Asian nations — were coerced by the Japanese Imperial Army to work as sex slaves during the war.

https://www.washingtonpost.com/world/south-korea-japan-reach-settlement-on-wartime-korean-sex-slaves/2015/12/28/e0578237-0a00-4f10-8491-1d85e72890b3_story.html
ただしwomen and girls として少女も併記しています。

英国BBCも20万人の説明は同様です

It is estimated that up to 200,000 women were forced to be sex slaves for Japanese soldiers during WW2, many of them Korean. Other women came from China, the Philippines, Indonesia and Taiwan.

http://www.bbc.com/news/world-asia-35188135


CNNもほぼ同様

It's estimated that up to 200,000 women were forced to be sex slaves for Japanese soldiers in World War II, mainly Korean. Other women came from China, Taiwan and Indonesia.


http://edition.cnn.com/2015/12/28/asia/south-korea-japan-comfort-women/


20万人については
 as many as  =まで
をつけて説明しているのが 
ガーディアンとワシントンポスト、
up to =以下
としているのがBBCとCNN


ちなみに
米国グレンデール市の慰安婦像のPeace Monumentには

「In memory of more than 200,000 Asian and Dutch women who were removed from their homes in Korea, China, Taiwan, Japan, the Philippines, Thailand, Vietnam, Malaysia, East Timor and Indonesia, to be coerced into sexual slavery by the Imperial Armed Forces of Japan between 1932 and 1945.」

more than =以上

そもそも番組の趣旨は慰安婦問題での日韓合意についての評価なのですが、日韓両政府は合意内容に慰安婦人数を取り上げていません。

論点ずらしも右翼の常套手段ですが、TVでの発言ならもう少し節度を持つべきです。
 



「韓国は慰安婦20万人と主張している。
それには挺身隊の女工も含まれるが、、、」
と勝手に
挺身隊の女工を含めています。

慰安婦研究が進んだ1990年代以降、韓国やその他の研究者はそういう混同をして慰安婦数を推計していません。

IWGが2006年に発行した「
Researching Japanese War Crimes: Introductory Essays」にも
犠牲者数は20万人説が一般的ですが、確定していないとし、
高崎宗司氏(原文表記Takasaki Shōji)の指摘では、「多くの韓国の活動家は女子挺身隊と慰安婦を混同して慰安婦数の膨張をもたらした」との記述もあります。

そのうえで2007年、慰安婦数最大20万人最小5万人と米国議会の対日非難決議前に報告書が提出されました。 



韓国の慰安婦数についての見解 韓国女性家族部
http://www.hermuseum.go.kr/japan/sub.asp?pid=137


「慰安婦に動員された女性の総数については、未だ正確な情報は分からない。」

「一部の学者たちは、日本軍の「兵士何人あたりに慰安婦を何人おくか」という計画が示された資料や、複数の証言資料に基づき元日本軍慰安婦被害者の総数を推測している。しかし、最低3万人説から最大40万人説と、研究者によってバラツキが大きい。」
「慰安婦問題を長期間に渡って研究してきた研究者・吉見義明氏によると、日本軍慰安婦の数は少なくとも8万人から20万人と推定され、その中に占める朝鮮人女性の割合は半分を超えるという調査結果を発表した。」

公式に20万人と韓国政府は主張していませんね。青山氏は「韓国が」と言うだけで「韓国政府が」と明言していません。あとで姑息な言い逃れをするためでしょう。



青山氏らは挺身隊といえば法令に基づき動員され、工場で働く「女子勤労挺身隊」に決まってると都合よく思い込んでいるだけで、

貿易新日本の挺身隊(1933大阪毎日新聞)

われらは銃後の挺身隊(1938内閣情報部編輯 週報 第110号)
南方建設の挺身隊(1942大阪毎日新聞)
と多くの挺身隊の呼称がありました。


他にも民間の用例が当時の新聞記事で多数確認できます。

また「内閣情報局編輯 写真週報 第206号」の用例で、開戦直後の1942年2月の段階で既に「女子挺身隊」「陸軍女子挺身隊」と書かれています。
「女子勤労挺身隊」は1943年から1944年であって、それよりも前に既に「女子挺身隊」は用いられていました。

更には敗戦直後「特別挺身隊」として占領軍慰安婦に強制動員された
女子青年団埼玉第一中隊の103人女性達も記録されています。
占領軍慰安婦 国策売春の女たちの悲劇」山田盟子(光人社)


アジア戦域の米軍新聞「ラウンドアップ」1944年11月30日付(JAP COMFORT GIRLS)
http://www.awf.or.jp/pdf/0062_p061_088.pdf(p63~)ウォルター・ランドルという記者が捕虜になった慰安婦の聞き取りをして記事にしています。場所はビルマと雲南の国境地帯。

その一節
「1942年の4月初め、日本の官憲が朝鮮の平壌近くの村に来た。彼らは、ポスターを貼ったり大会を開くなどして、シンガポールの後方基地勤務で基地内の世話をしたり病院の手伝いをする挺身隊(原文では、"WAC"organizations )の募集を始めた。4人はどうしてもお金が必要だったのでそれに応じたという。中略・・しかし、船が約束のシンガポールに立ち寄っただけで、そのまま通過してしまってからは心配な気持ちが広がり始めた。
ビルマのラングーンから北へと向かう列車に積み込まれたときには、もはや逃れられないと運命を悟ったという。」

WACの直訳は陸軍婦人部隊
当時日本軍には女性がいなかったのは米国でも周知の事実だったので、軍に所属する「女子挺身隊」を英訳するのにWACを充てたのでしょう。

英語翻訳ですから慰安婦が実際に「女子挺身隊」と言ったかは確認できませんが、類似の表現には違いないでしょう。また「慰安婦」と言って募集したのではないのは間違いないでしょう。 
他にも挺身隊或いは報国隊、婦人部隊、奉仕隊という名目で慰安婦が集められたのは多くの証言などでも明らかです。




青山氏が言う日本内地へ動員された朝鮮人女子勤労挺身隊の総数については

 歴史学者の高崎宗司氏は多く見積もっても4000名、秦郁彦氏は約1万名と推計しています。

青山氏は慰安婦19万人なら異論ないのでしょうね。笑;


杉山審議官は女子差別撤廃委員会で

Women who had been requisitioned as labor force on the Korean Peninsula and Taiwan, sometimes on a voluntary basis, had been confused with cases of comfort women,
自主的に、朝鮮半島や台湾での労働力として接収されていた女性は、慰安婦の例と混同されていた。」
と主張しています。

「挺身隊」との説明で仕事内容も看護婦の助手などといった虚偽の勧誘を信じて慰安婦にされた女性のことは含まれていないようです。
騙された場合は自主的とは言いません。


※1
「大本営陸軍部研究班「支那事変に於ける軍紀風紀の見地より観察せる性病に就て」
 
1940年までに性病にかかった中国出征陸軍軍人14,755人であるとし、性病感染時の「相手女」として次のような数字をあげています。すなわち、「朝鮮人」4,403人(51.8%)、「中国人」3,050人(36.0%)、「日本人」2,418人(12.2%)です。