朝日新聞の報道により憲法13条の人格権が侵害されるとすることには、飛躍があると指摘し、東京地裁が原告の請求を棄却しました。2017/4/27

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017042700971&g=soc


グレンデール市の慰安婦像訴訟においても、原告の名誉毀損の被害認定はなされませんでしたが、同様に国内においても70年も前の事象を対象とした歴史評価が当事者でもない人の名誉毀損にはあたらないというものです。

また過去エントリも参照してください。


http://senbonzakura.blog.jp/archives/31435639.html

(原告の
The Global Alliance for Historical Truth/ GAHTと称する「歴史の真実を求める世界連合会」という右翼団体は「サンタモニカに本拠を置く世界的な組織です」と言いながら、彼らの主張を正確に反映したようなまともな英語のHPすら持たず、世界に発信する気もない単なる日本国内での寄付金集めの営利団体と目されてもいいような団体です。Link先も寄付金集めを目的としたHPです。
第一審でSLAPP(恫喝的訴訟)認定を食らって、被告グレンデール市への訴訟費用の賠償を命じられたけれども、その時明らかになった市側の訴訟費用に比べて、原告GAHTが決算報告に記載している原告側の訴訟費用はかなり高額です。寄付した方々は高額な悪徳弁護士に文句を言わないのだろうか?)






吉田証言の記事についての判決文の一部では

「これによって現在の日本人の社会的評価が低下するとはいえず、いわんや原告ら個々人の社会的評価が低下するとは到底いえない」

単純にいえば
原告らは勝手に「自虐」しているとの裁判所の見解です。

事実関係について
判決は、
○ 韓国においては「慰安婦の強制連行
」が46年から報じられた。
○ 45年ころから60年代前半までは「挺身隊の名のもとに連行されて慰安婦にされた」と報道された。
○ 「20万人」についても70年には報道されていた。
と認めました。


ということで原告が主張する
朝日新聞報道より、韓国内での報道の方が以前からあったと裁判所が認め、朝日新聞の記事が慰安婦問題の国際世論に与えた影響についてほとんど評価しなかった訳です。

勿論具体的な例(2007年米国下院慰安婦対日非難決議の前提とされた報告書にも朝日の記事は引用されていない)も判決文に記載があります。
アメリカは過去エントリにも書いた9項目の公文書や証言記録を証拠としています。

また原告が主張する
「日本人は20万人以上の朝鮮人女性を組織的に強制連行して性奴隷として・・・・・無責任な民族ないし人種である」という不名誉な烙印を押されるに至った。 

という内容について裁判所は

「単一内容のものに収斂されているとまではいえず、多様な認識や見解が存在していることが窺えるところである」と述べています。


事実、韓国政府の慰安婦問題の部署である「女性家族部」には原告が主張した「
20万人以上の朝鮮人女性」との記述はありません。

2007年のアメリカ下院の対日非難決議や2008年韓国国会の非難決議にも「20万人以上の朝鮮人女性」という主張はなされていません。アメリカ議会に提出されたレポートでは慰安婦総数5~20万人、韓国女性家族部では学説として3~40万人を紹介していますが、「未だ正確な情報は分からない」としています。

クラワスラミ報告についてもしかり、グレンデール市慰安婦像横のプレートにもそんな記述は一言もありません。

主要欧米メディアの論調もほぼ同様で、慰安婦とされた日本人以外に朝鮮・中国・フィリピン・インドネシア・オランダ等の各国の婦女子も加え合計20万人としています。


http://senbonzakura.blog.jp/archives/52437063.html




判決文では「そしてそれら認識や見解が形成された原因につき、いかなる要因がどの程度に影響を及ぼしているかを具体的に特定・判断することは極めて困難であるといわざるをえない」と述べています。





判決文の全文は原告らのHPにPDFファイルがあります。

http://www.ianfu.net/pdf/290427_hanketu.pdf

判決に疑義のある人は判決文を精査して、裁判所が示した事実関係や法的根拠をじっくり考察しましょう。

朝日新聞の慰安婦報道をめぐっては,ほかに「朝日新聞を糺す国民会議」と「朝日新聞を正す会」のグループが朝日新聞社に対し集団訴訟を起こしました。いずれも東京地裁や高裁で請求が棄却されています。

自民党で比例復活した長尾たかし以外の「朝日新聞を糺す国民会議」に名を連ねた10人の国会議員はその後全員落選しています。
「朝日新聞を正す会」(150人)は高裁の判決公判には弁護士以外無責任にも誰一人傍聴しませんでした。まあ勝ち目のない戯言を訴えても勝訴の見込みがないと自覚していたからでしょう。


ついでだから付け加えると、さすがに法廷では国家犯罪に関してウヨがよく持ち出すトンチンカンな「推定無罪論」は主張しませんでした。権力の不法行為に推定有罪はあり得ても推定無罪はありえません。
仮にネトウヨ並な主張をすれば裁判所に一蹴されるのがオチですから。

最近でも森友学園問題では公文書データはすぐに消去しただの、開示請求で提出された文書は全て黒塗りだっただとか、都合の悪い情報を隠蔽できるのは国家権力だけですから当然です。

「政府調査で公文書を発見できなかった」と言うだけで、推定無罪と言ってその事実を全否定できるものではありません。
終戦時多くの文書が焼却されていますし、警察資料が全て公開されている訳ではありません。


現在まで発見された日本軍の文書の多くは戦地で焼却を免れた物を連合軍が押収し、後に日本に返還されたものです。