ネトウヨが適当な和訳をして、都合よく屁理屈を並べるのによく引用されるのが米公文書の「ミッチナ捕虜尋問調書49号」ですが、その一節にある "professional camp follower"を彼らは「追軍売春婦」と解釈しています。

恐らくテキサス親父が2013年に当該レポートのコピーを入手し、関係者が和訳してネットで公開したのがネトウヨの中だけで拡散したのでしょう。
字幕つき動画はYoutubeで確認できます。

https://www.youtube.com/watch?v=rLR1RRjCg6o


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本物の報告書ならビルマで捕虜にしたんですけど・・・・

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どこにそんなこと書いてあるのでしょうか? 

原文:”Some of the girls were thus allowed to return to Korea.”
帰国を許されたとあるだけです。

そして現実には後に出されたATIS調査120号レポート1945/11/15では
But owing to war conditions,no one of prisoner of war's group ha so far been allowed to leave. 
即ち 戦況の影響で慰安婦は誰一人帰国を許されなかったと記録されています。

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彼女達は不満を言ったが、残念だとはひとことも言っていないでしょう。
原文”The girls complained that even with the schedule congestion was so great that they could not care for all guests, thus causing ill feeling among many of the soldiers.”

彼はイタリア系アメリカ人ということですが、英語を喋れても、文章はまともに読めないようですね。
 


そしてテキサス親父公式HPと称するページに "professional camp follower"の翻訳が掲載されています。



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それより以前にも「追軍慰安婦」としているページを見かけますがそれほど認知度は高くなかったと思います。 

今やgoogleで「追軍」と検索すればほぼネトウヨのページばかりですが、河野談話が出された頃には「従軍慰安婦」のページはあっても「追軍慰安婦」なるページはありません。
当該レポートはなにもテキサス親父が最初に見つけたのではなく、政府調査資料として1992年に既に公開されています。
 
そもそも「追軍」という日本語はなく、主要なWEB辞書でも掲載されていません。(当然「従軍」はあります) 
辞書にも載らない言葉ですから正しい日本語という評価はできないでしょう。
いわばネトウヨのネトウヨによるネトウヨのためだけの(捏)造語といえるでしょう。 
followerを都合よく「追っかける人」 という誤訳に近い意訳をしているだけです。

しかし"professional camp follower"がひとつの名詞(熟語)を表しているのです。
「軍事組織専属に働く使用人、しばしば売春婦 」と解釈するのが普通でしょう。「English Language & Usage Stack Exchange」(WEB英英辞書)による解釈

日本版Wikipediaの「日本人戦争捕虜尋問レポート No.49」の項では(職業的な野営随行者)と注訳していますが、確かに「野営随行者」と訳しても間違いではないのですが、それはアメリカ独立戦争当時のcamp followerであって20世紀には米軍ではcampを海外の基地、駐屯地として使用しています。
沖縄の海兵隊基地の名称でも普天間飛行場のキャンプフォスター(瑞慶覧)やキャンプシュワブ、キャンプハンセンなどcampが使用されています。当然野営なんかしていませんし、立派な施設です。


 それとも本当に日本軍のミッチナの基地では(校庭などに)天幕を設営して毎夜キャンプファイヤーで酒盛りでもしていたのでしょうか?
Wikipedia同項では「彼女らは通常2階建ての大きな建物(学校の校舎)に住んでおり、個室で生活し、仕事をした」という説明をしていますが、campを野営とするなら「追軍」した慰安婦がしっかりした建物で生活し、兵がお粗末な天幕生活をしていたということになり完全に逆転します。
お笑い翻訳ではないでしょうか?

明らかに「追軍」を用いるのは矛盾しています。
また野営しながら「追軍」するのなら慰安婦がテント生活をしていなければなりません。
いずれにせよ野営と「追軍」をセットにするなら全く辻褄が合いません。

お笑いネトウヨのブログには「野営追軍プロ」なる新語も登場しています。


さらには「プロの売春婦」として拡散させているネトウヨもいますが、同調書には「入営した女性のなかには「地上で最も古い職業」(娼婦)も若干名いたが、大部分は売春について無知、無教育であった。」と記述されています。

「虚偽の説明を信じて」同項より引用(だまされて)挙句の果てにプロとしての仕事をさせられた訳ですから、「プロの売春婦」と切り取っての主張は明らかに慰安婦になる経緯を意図的に隠蔽していることになります。
またprofessionalは「専門」という意味であり、所謂「素人」に対する「プロ」という解釈は適当ではありません。
このレポートでは「軍専門」という意味で用いられています。

ではこのレポート以外に”camp follower”が実際にはどういう使われ方をしていたのでしょうか?
よくわかる例があります。
 
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Women of a defeated land,forced to sell their bodies to the enemy soldiers.
敗戦地の女性、敵兵に自分の体を売ることを強制されました。

THE CAMP FOLLOWERSというイタリア映画(脚本Ugo Pirro)1965年のポスターです。 
イタリア語原題は 「Le soldatesse」、ストレートに軍の構成員ですよ。


「商売で部隊について来た(民間)売春婦」といった能天気なニュアンスでは全くありません。
映画は伊ファシスト軍が侵攻したアルバニアで現地女性を犯したストーリーですが、女性が軍に追いつかれていますよ 笑
日本軍がインドネシアで慰安婦にしたオランダ人女性とダブリますね。


そしてレポート原文には続いて "attached to the Japanese Army for the benefit of the soldiers"
と書かれています。それを合わせてひとつの名詞を構成しているわけですが、テキサス親父のHP翻訳では完全に無視しています。
"attached to"の用例として”nurse attached to the army”があります。「従軍看護婦」のことです。
従ってレポートの記述は「従軍売春婦」 或いは「日本軍所属の売春婦」(秦育彦氏)と解するのが妥当でしょう。

また同レポートは慰安婦は売春婦と同じだと記述していますので、「従軍売春婦」イコール「従軍慰安婦」としても全くおかしくありません。 

しかし何故当時「慰安婦」という言葉を使ったのでしょう。なぜ当時の公娼制度(当時合法)があったのに従軍「娼妓」とか従軍「娼婦」という名称を用いなかったのでしょう。
従軍看護婦以外にも当時従軍カメラマン・従軍画家・従軍記者という軍の要請で働く人はいました。



しかし規律と秩序、高度な精神性を謳う皇軍に「娼婦」が帯同しているのを公にできなかったという理由もあるでしょう。

またわざわざ「慰安婦」のような名前をつけたのは何故ですか?
慰安婦は「娼妓取締規則」から外れた徴集を行っており、また軍専用の慰安所という「規則」外の場所での就業は「公娼」とは言えなかったらでもあるでしょう。

要するに(合法を裏付ける)新しい法制度も制定せずに軍が新ジャンルの「慰安婦」制度を作った訳です。

また国内は当然として朝鮮半島・台湾でもストレートに「娼婦」とすれば思うように人が集まらなかったでしょう。
いずれにしても「慰安婦」のように当時曖昧な言葉が都合よかったのです。

そして軍の新語であり、内地(沖縄を除く)で慰安婦という職業はなかったので、わざわざ「従軍」をつける必要もことさらなかった訳です。ただ「軍慰安婦」と記された当時の文書は存在します。

しかし実態は「従軍」に間違いないから「従軍慰安婦」と表現してもなんら間違っていないと思います。
慰安婦に軍が賃金を払っていなかったから「従軍」では無いと言う説もありますが、「従軍看護婦」に軍が賃金を支払ったというエビデンスでもあるのでしょうか?日赤が支払っているはずです。
また国策映画のカメラマンは映画会社から給料を貰わず、軍から支給されていたと言うのでしょうか?


「追軍売春婦」をネトウヨ仲間だけの隠語みたいに使うだけならいいのですが、海外からの非難に対抗するには全く意味のないどころか,インチキ翻訳を振り回せば知能程度を疑われるのが関の山でしょう。
米国は勿論、中韓でも引用した原文のままストレートに解釈しますからね。

2007年、米国下院で慰安婦対日非難決議が採択される前に議会に提出されたレポートには、この米軍調書も「非難に値する証拠」のひとつとして挙げられているのです。