TBS報道特集2015年7/25について
http://www.tbs.co.jp/houtoku/onair/20150725_2_1.html#



まあネトウヨはまともな書き込みは当然できず、
「強姦したのはチョン」「韓国もベトナムで・・」「TBSは売国奴」「証言はウソ」「オランダ人の捏造ドラマ」といった調子で相変わらず真実を拒絶しています。

まだ小林よしのり氏のブログ発言の方が番組に批判的であってもまともです。
「今回の番組は知的誠実さに欠けていたと言えよう」と結論付けていますが、

「募集広告で自発的に慰安婦になった娘ばかりではないようだ」
「吉田清治の人さらい的「強制連行」にこだわりすぎて、このような戦時性暴力が見えてなかった」
「中曽根康弘が慰安所を作った理由は、日本兵が現地の女性を強姦しまくっていたかららしい」
という素直な認識をもとに
「同じ日本人として恥ずかしく思った」と感情を述べている。
今まで自分の気持ちいいウヨネタだけを漫画にしてきただけで、どれだけ真実を知ろうと努力してこなかったかが分かる発言ですね。


しかし「被害者の女性をサポートしているのがオランダ人の女性だということだ」
という前提で、しかも番組に出てくるオランダ人ジャーナリストは日本軍の戦争犯罪という言葉は出したものの、蛮行をことさら非難しているシーンは出てこないのですが、
「軍が統治する前、インドネシアはオランダに350年間も植民地にされていたということを! 」
「オランダ人はインドネシアのことで、日本人を批判できる立場にはない!」
と強い調子で主張しています。インドネシア在住歴の長いジャーナリストがオランダ人であっただけで、オランダ政府関係者でもありませんよ。
しかも番組の趣旨とは全く関係ないでしょう。

すぐ他国を例に出して非難をかわそうと企て、自らの歴史問題を誠実に見ようとしない右派の理屈丸出しです。


では被害の当事者であったインドネシア人は日本統治時代をどう捉えているのでしょうか?

「日本によって占領された他の地域と同様に、インドネシアはその国民が極めて苦しめられた国であったと言えよう。日本民族による残虐行為は西欧民族が犯した残虐行為を超えていた。」
原文:Kekejaman oleh bangsa Jepang melebihi kekejaman yang dilakukan oleh bangsa Barat.

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インドネシア歴史教科書 高校3年生向け

また「インドネシア史上最悪の時代であった」としています。同国の独立に寄与した日本人として右派が持ち出す海軍提督前田精(マエダ タダシ)少将についての記述も全くありません。
右派がいう「大東亜戦争アジア解放論」には全く与していないのは明らかです。

事実日本軍の敗北から1947年5月の全日本人引き揚げまでのあいだに、日本軍の死者は1078人を数え、この人数は、武器譲渡をめぐる独立派との衝突や、連合国側の進駐軍が現地の治安確保のために日本軍部隊に出動を命じて独立義勇軍と戦闘になったこと、などによるものです。
要するに連合軍の指令とは言え独立戦争の足を引っ張っていたのです。
戦後インドネシア政府は日本人に国家最高の栄誉「ナラリア勲章(独立名誉勲章)」を授与しているが、それらの対象者は日本軍から離脱し脱走兵扱いだった元日本軍兵士であり、国家政策とは無縁の個人の義憤などによるものです。

衆議院・大蔵委員会 1950年12月8日では次のようなやりとりがありました。
(1949年12月にインドネシア連邦共和国が成立)

○川島委員(川島金次)
インドネシア、インド支那、こういう方面にもフイリピンと同じように、対日感情の芳ばしからざる面が相当あるわけであります。

○池田国務大臣(池田勇人)
 川島君の言われるようなことを私は他の人からも聞いたのであります。太平洋戰争中にわれわれの同胞の犯した罪に対しまして非常に憎悪の念を持ち、それがだんだんよくなりつつはありますが、まだわれわれの想像以上に憎悪の念が残つておるということを聞いておるのであります。

日本が独立に寄与したといったインドネシア国民感情が皆無だったのが当時の国会答弁でも明らかです。
 


米国の調査機関によると、日本の戦時中の行為に対する謝罪には不満足だとする国民感情は、中韓についでフィリピン、インドネシアが続いています。(2013/7/11)

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インドネシアでのアンケート結果だと、No(十分に謝罪していない)が40%。Yes(十分に謝罪した)29%及びNo apology necessary(謝罪は不要)6%の合計35%を上回ります。DK(don't know 知らない)は25%。

同調査ではインドネシアの79%の人が日本に好意的というアンケート結果がありますが、謝罪についてあいまいにしている日本の態度については批判的です。

しかし産経の古森義久氏は公表された年の7月31日にこの調査結果について
多大な犠牲を出したフィリピン・マレーシア・インドネシアなどという諸国で「もう日本はこれ以上、謝罪する必要はない」という答えが多数を占めることである。・・・との捏造記事を
JBpress(日本ビジネスプレス) に寄稿しました。
彼は産経読者層などは引用した原文(英語)は読まない(読めない)という前提でインチキ記事を書く常習者です。
各国の多数派(50%以上)どころかインドネシアでは「
十分に謝罪していない」が上回っています。

またコメント欄では某氏が「この手の調査を行うのは、基本的に韓国人が作った調査機関か、中国人が作った調査機関です。」と根拠なく断定し調査内容の信憑性を否定しています。
しかし同機関はアメリカの元国務長官と元国連大使が運営に当たっています。
また彼は同時に「中国は言論統制があり正確な数字とは言いがたい。」ともしていますが、調査方法も記戴されており、客観性を担保できる手法が用いられています。
いずれもリンクを貼った原文報告書を読めば手前勝手なトンデモ理屈は言えないはずですがね。

日本の外務省が行った調査では

ASEAN諸国における対日世論調査 平成14年11月 

第二次世界大戦中の日本について、


「悪い面を忘れることはできない」 
インドネシア:25% 
マレーシア:22% 
フィリピン:33% 
シンガポール:31% 
タイ:18% 
ベトナム:12% 

 各国において18歳から59歳までの300名を対象(ただし戦時中を知らない世代ですから直接日本軍の占領を体験していない世代)



オランダ政府は2005/8/16、インドネシアにたいする植民地支配と軍事攻撃について深い遺憾の意を公式に表明しました。
「オランダの行動によってあなたがたの多くの人々が犠牲となった。私はここにオランダ政府を代表して、こうした苦しみに対して深い遺憾の意を表明します」
オランダのベン・ボット外相が、ジャカルタのインドネシア外務省を訪れて声明を読み上げました。(米国・日本・オーストラリア・シンガポールの各在インドネシア大使も同席しています)


小林よしのり氏のように日本がオランダのことを持ち出すのは恥ずかしいじゃありませんか?


私は他国から断罪されるよりも、まず我々日本人自身で事実を検証し、罪は罪として、反省すべきは反省すべきであり、謝罪を躊躇わず、その為にはより多くの歴史の発掘の努力を怠ってはならないと思います。
ドイツはニュルンベルグ裁判を認めないのですが、日本右翼の東京裁判の否定論とは違い、ドイツは自らの手で戦争犯罪を暴き、独自にそれを裁いています。

ましてやウソや事実を隠蔽するといった卑怯なやり方で愛国者ヅラするのは、誇りある日本人とは到底言えません。
番組では中曽根康弘元首相が戦時中に慰安所設置に関かわったという場面もありました。そこには限りなくウソに近いと思われる中曽根氏の発言の指摘がありました。


中曽根康弘氏は「終わりなき海軍」1978年で
「三千人からの大部隊だ。やがて、原住民の女を襲うものやバクチにふけるものも出てきた。そんなかれらのために、私は苦心して、慰安所をつくってやったこともある。・・・・」 
と自慢話のごとく記しました。


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しかし番組では次の発言シーンが出てきます。
「事実と違う。海軍の工員の休憩と娯楽の施設をつくってほしいということだったので作ってやった」
と2007年日本外国特派員協会での記者会見で弁明しています。


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ところが同書の編者である松浦敬紀氏はその10年ほど前、「フライデー」の取材に「中曽根さん本人が原稿を2本書いてきて、どちらかを採用してくれと送ってきた」「本にする段階で本人もゲラのチェックをしている」と明言しています。

さらに記者会見での発言が事実ではなかったのが、防衛省所蔵の公文書で証明されています。

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主計長の取計で土人女を集め慰安所を開設氣持の緩和に非常に効果ありたり」



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主計長 中曽根康弘の記述

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以上「海軍航空基地第2設営班資料」
 防衛研究所 戦史研究センター所蔵
http://wam-peace.org/ianfu-koubunsho/pdf/M-PDF/J_004.pdf

以前から知られていた事実なのですが、今までマスコミで取り上げられることがなかったのに、今回TV番組で報じられたことは評価に値すると思います。

中曽根氏は沈黙を通し、中曽根康弘事務所は「記者会見」での内容はそれ以上でもそれ以下でもないと、証拠(公文書)を突きつけられても慰安所を作ったことを認めていません。
多くの建物のうちの1棟に碁盤や将棋盤を用意するだけならなにも「苦労」することなんてありませんし、自慢話にすらなりません。正直に実態を語ってこそ責任ある立場であった人間の為すべきことではないでしょうか。
首相であった人間がこうした不誠実な態度を取り続けるのは日本の名誉と信頼を損ねていると思います。

自民党には「日本の名誉と信頼を回復するため」中曽根康弘氏へ記者会見での発言を撤回・修正するように提言していただきたいものです。