「187人の歴史家声明」の日本語訳を担当した浅野豊美・早稲田大教授のインタビュー記事が毎日新聞2015/7/4に掲載されました。
まず彼は「声明」をサンド教授の仮訳を基に2人で翻訳したと言っています。

「声明のテキストを練りに練った分、それ以外はすべて個人の意見です。報道ではその区別がなされていないところがあります。運動体に参加している先生のみならず、普段は授業と研究に集中し、政治活動とは距離を置いている先生も今回は多く署名しています。若手などではなく、米国でしっかり日本研究をしている永続ポストの教授が中心になったことが重要です

浅野さんがみる声明のポイントは次の通り。

 「第一に、声明は日本を「第二の故郷」とみなす海外の日本研究者が日本社会と政府に宛てたものだが、歴史研究の自由については、韓国・米国を含むあらゆる政府に呼びかけている。」

 「第二に、歴史が東アジアで「民族主義」の手段となっている状況に警告している。歴史研究の成果こそむしろ民主主義を強化し、国家間の和解を進めるものと位置づけている。」

 「第三に、米国でも黒人の公民権回復までに、奴隷解放から1世紀を要したことを例示して、世界の帝国主義と植民地支配清算の先頭に日本が立つことを期待している。それを前提に日本政府が「慰安婦」問題に取り組むよう求めた。」

とその意図を示しました。

多くのウヨクたちはその「民族主義」を非難されていると感じつつ、中国・韓国も同様とした声明には一定の評価はしています。
しかし「民族主義」を警告した具体例として「強制連行」「慰安婦20万人」をことさら取り上げ問題の矮小化をすることに問題があると「声明」は述べているのに、藤岡信勝氏らは相変わらず「20万人」ではないとか、「強制連行」はなかった、とか言って「声明」をまともに解釈していないのは以前にも私が指摘したとおりです。

「何故日本にだけ植民地に関して反省を促すのだ、白人優位主義者の上から目線だ」と非難したネトウヨブログは単にその読解力に問題があるのか、それとも「声明」が気に入らないから攻撃するために曲解しているのか、いずれにしても「声明」に込められたメッセージをまともに受け止めていませんね。
過去の植民地に関して他国がまだ清算しきれていない問題ではあるが、日本が率先してその作業をすることを期待している訳で、なにも日本を攻撃しているわけではないのです。
そして「何故日本にだけ」というのは彼らが日本の研究者であるからで、米国はもとより英国やフランスの近代史を研究している学者が日本に向けて発しているのではないのです。
「自国のことを棚に上げて・・」という逃げは許されないでしょう。



さらに第一の「歴史研究の自由」については「声明」発表の大きな動機と私は思いますが、そのメッセージについてはウヨクは全く無視しています。
日本の外務省が直接「マグロウヒル社」に訂正を求めた事に端を発しているのですが、権力介入についての見解は全くと言っていいほど言及されていませんね。

まずは百田某とか彼を擁護する辛某とかいった連中の言動と同じようなもので、「反日出版社」は潰したいという気持ちは根底にあるのでしょうが、さすがに右派論客と言われる人は表立ってそこまでの無頼はできないでしょう。そして「歴史研究の自由」に対して反論し切れないから無視しているわけです。
右派は「言論」と政治的「圧力」とは全く別物だということを理解できていないのではないでしょうか?
またダデン教授らには脅迫状が何通も届くというのですが、それも是とするのでしょうか?


政治と一線を引く永続ポストの教授同士が論を戦わすには、何等問題がないどころかむしろ建設的議論となるでしょうが、「声明」にイチャモンをつける右派の多くは歴史学者でもなく、永続ポストの研究者でもありません
掲示板に群がるネトウヨに至っては、ただのすて台詞を残すだけで、「声明」を非難する理屈としてまっとうな意見なんてまずありません。
まあ落書きだから相手する必要なんて一切ないですけど。